ジャパンタクシー、新しい日本のタクシー目指すもクレーム多発!
トヨタ自動車では、今までタクシー専用車両として22年間に及び生産してきた「クラウン・コンフォート」の生産を2017年3月に終えた。それに代わる日本の新しいタクシーのスタンダードとして鳴り物入りで発売された『ジャパンタクシー』(通称JPN TAXI)。しかし、思わぬクレームが多発している。
ジャパンタクシーの特徴として、2020年に控えた「東京オリンピック」に向け、世界へ日本をアピールするために、日本の”和”をイメージする「ジャパンブルー」と言う藍色のボディカラーが用意された。デザインの特徴である全高1740mmの高いルーフは、車イス利用者も不自由なく利用できるように工夫された、ユニバーサルデザインであることの証である。
乗客が乗車する後部座席も、頭上に余裕があり、足元のスペースが広い。上級グレード『極』では、後席専用エアコン、シートヒーター、紫外線防止ガラスなどの装備も完備している。ドライバーが乗務する運転席も、大きなフロントガラスで視認性が高く、LEDヘッドライトで明るく夜間も視界が良い。また、安全面でも、TSS=トヨタセーフティセンスと呼ばれる衝突回避支援パッケージ(プリクラッシュセーフティー、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム)が装備されている。ドライバーからも、乗客からも高い評価を得ている。
そんな、人気のジャパンタクシーではあるが、実は早急に解決しなければならない幾つかの問題を抱えている。その問題の中でも最大の難題が、車イスでの乗降。
これを実際に行うと非常に困難であることが解る。
- 車イスが乗るためのスロープを出すことが困難
⇒ 金属製のスロープが重い。車両左側に約2mのスペースが必要。 - 車イスを転回することが困難
⇒ 後席スペースは狭くて車イスが転回できない。 - 乗降に時間がかかる
⇒各約20分、合計で約40分が必要。(メーカー側の弁:慣れれば各約15分)
車イス利用者は健常な状態ではない場合も多い。乗車に20分間も必要となれば、真夏の炎天下や真冬の極寒に乗客が体調を崩したりする恐れがある。
これでは、装備されていても実用できない。それが原因で乗客とトラブルになった事案も多く発生しているようだ。
今までのタクシーでは、車イスはトランクに収納し、ドライバーが乗降の際にはサポートし乗客は通常通りに乗車する。この方法が、お互いが慣れていて、長い時間がかからない。つまり、乗客に最も負担がかからない。
ユニバーサルデザインなので、従来のタクシーと福祉の役目を果たせる車両となることは理解できます。しかし、タクシー業界と福祉業界は住み分けがあります。国の管轄官庁も、タクシーは国土交通省、福祉は厚生労働省。タクシーは運輸であり福祉ではありません。
タクシーはタクシー車両が行い、福祉は福祉車両が行う。一つの考え方として、別々に進歩する方法もあるのではないでしょうか。
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ジャパンタクシーへの大きな期待と思わぬクレーム【藤井真治のフォーカス・オン】
12/28(金) 8:00配信
今や日本の都市部の景観を変えつつあるトヨタの『ジャパンタクシー(JPN TAXI)』。東京ではそのダークブルーのボディが街並みによくマッチしている。
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2017年の発売以来そのユニークなカタチと居住性、環境にもやさしいLPGハイブリッドの魅力で日本のタクシーはまさにその名の通りジャパタクシーに置き換わりつつある。国土交通省のユニバーサルデザイン(UD)認定を取った車両は、大きな荷物を持った旅行者、クルマいすの乗車客、老人や子供を連れた人たちにも優しい。オンピック・パラリンピックを控えた東京都は国とあわせて合計で100万円の補助金を出し普及を推進している。
◆クルマ椅子団体からの厳しい要求
その好調なジャパンタクシーに予想もしなかったクレーム勢力が現れた。車いすの団体がトヨタ自動車に対し乗降に不便な構造への改善要求を提出したのだ。署名が1万件も集まったという。
その団体によればジャパンタクシーの問題はクルマいすでの乗り降りに大変な労力と時間がかかる事だという。車イスでの乗車はクルマの左側歩道側のスライドドア。乗車をする際に運転手は備え付けのスロープを出して組み立て、シートの配列変更によって車内の充分なスペースを確保。ベルトの装着など安全対策をとり、車いすを押してスロープを上がり、室内で90度回転させる必要がある。結果乗車プロセスに20分くらいかかるという。
◆後部ドアから車いすは入れない
トヨタとしては、これまで販売店やタクシー会社と共同でタクシーの乗務員に対し車いす乗車の際の手順をかなり積極的に教育してはいる。しかしながら「仕事のアガリ」に追われるタクシー乗務員としては20分の時間のロスは大きい。また車いすごと乗客を室内に乗り込ませる事自体、かなり骨の折れる仕事であり慣れない乗務員は乗車拒否をすることもあるようだ。
このデザインの「ジャパンタクシー」で移動の自由を楽しみたいと思う車いすの人々が、ちょっと期待を裏切られた気持ちになるのも理解できる。
車いすのユーザーとしてはサイドドアから運転手に押してもらうのではなく、後部ドアから自力でクルマに乗り込みたいと思うのは自然の欲求であろう。
ジャパンタクシーのベースになっているトヨタの『シエンタ』には後部ドアから乗り込めるタイプもあるため、同じかと思って実際にバックドアを開けてみると大きなLPGタンクがでんと鎮座し、後部ドアからの乗車を不可能にしている。
◆頑張って世に出したジャパンタクシーだが
一部の個人タクシーを除き現在のタクシーのほとんどはLPG(液化石油ガス)である。LPGはガソリンやディーゼルと比較し燃費が良いしEVなどと比較し車両値段が安い。コスト重視のタクシー会社はこのLPG方式は変えたくない。LPGタンクは大変大きくクルマの設計者泣かせの代物だ。従来型のタクシーはトランクルームを犠牲にしながら、後部座席の後ろに詰め込まれ目立たない存在だったのだが、UDデザインのジャパンタクシーのようなトランクと室内が一体になった構造では大変目立つ邪魔モノとなってしまったわけだ。ユニバーサル認定は日産のワンボックス・ベースのタクシーである『NV200』も取っており、こちらは後部座席からクルマいすでも充分乗り込める。しかしながら、このタクシーはガソリンとLPGのバイフューエルでボディサイズも大きい。1日350kmも走る都市部の「流しのタクシー」には向いておらず、オンディマンド向けのタクシーに適していると言えよう。
トヨタの設計者はタクシー会社や乗客の要望を踏まえ、厳しいコスト制約の中でかなり頑張って「ジャパンタクシー」を世に出したようだ。従来型と比べると少し高額だが燃費もいい、補助金も出る。タクシー会社にとっては大変うれしいクルマ。もう一つのユーザーグループであるクルマいすの人たちにとってこのボディを見た時の期待値も大きすぎただけに、失望感も大きかったのであろう。逆に言うと従来型のタクシーが当たり前の時代はだれもクレームを出さなかっただろう。◆モビリティ制約者へのインフラ整備のコスト負担は誰が
ユニバーサルデザインとは、移動の自由が制約された人たちにも優しいデザインである。クルマいす利用者、大きな荷物を抱えた旅行者、ベビーカー使用者、妊婦や松葉杖使用者、老人などである。シンガポールや北欧の先進国と比べると、日本の都市は昔と比べればかなり改善されたとはいえ、移動制約者にとって絶望的な部分が多い道路インフラや公共交通機関も多い。やはりドアツードアのクルマが救世主となる。
移動制約者のためのコスト負担をメーカーやタクシー業界に負担させることはできないため国や都の補助金が設けられてはいるが、もう少しハイレベルなところでモビリティ制約者のために何ができるかを包括的に考える場はないのであるろうか?本当にこのままLPGでいいのかという点も含め、まだまだ「都市モビリティのあるべき姿」については議論の余地がありそうだ。
<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。
《レスポンス 藤井真治》
最後までお付き合いありがとうございました。